HubSpot Sales Hubの使い方完全ガイド|BtoB営業チームが最初に設定すべき機能

HubSpotを導入したのに、営業チームが使いこなせていない——この状況は、BtoB企業のマーケ担当者や営業マネージャーから頻繁に聞かれる悩みです。原因の多くは、Marketing Hubの設定に注力するあまり、Sales Hubの初期設定と運用フローの設計が後回しになっていることにあります。

HubSpot Sales Hubは、単なるCRMではありません。コンタクト管理・商談パイプライン・メールシーケンス・タスク自動化・通話ログ・営業レポートを一元管理し、マーケが獲得したリードを商談・受注まで追跡できる営業支援プラットフォームです。正しく設定し、チームに定着させることができれば、マーケとセールスの連携精度が大きく上がります。

本記事では、HubSpot Sales HubをBtoB営業の現場で実際に機能させるための設定手順・使い方・運用フローを、導入直後のチームでも再現できる形で解説します。「どの機能から手をつけるべきか」「シーケンスとワークフローの違いは何か」「営業がHubSpotを使い続けるためにどんな仕組みが必要か」といった疑問に、実務視点で答えていきます。

目次

HubSpot Sales Hubとは何か——Marketing Hubとの役割分担を整理する

Sales Hubの全体像を理解するために、まずMarketing Hubとの違いと、Sales Hubが担うプロセスの範囲を明確にします。

HubSpotは複数の「Hub」で構成されており、それぞれ担当するプロセスが異なります。Marketing Hubはリード獲得・育成・MQL判定を担い、Sales Hubはその後の商談管理・クロージング・受注追跡を担います。CRM(コンタクトデータベース)は両者で共有するため、マーケが獲得したリードを営業がそのまま引き継げる点が最大の強みです。

Sales Hubが提供する主な機能は以下のとおりです。

  • ディール(商談)パイプライン管理:商談ステージを可視化し、進捗を追跡する
  • シーケンス:個別のメール送信を時系列で自動化し、タスクもセットで管理する
  • タスク管理:フォローアップ予定を個人・チームで管理する
  • 通話ログ・録音:HubSpot上から電話をかけ、ログと録音を自動保存する
  • ミーティングスケジューラー:カレンダー連携で商談日程調整を自動化する
  • 営業レポート・ダッシュボード:パイプライン状況・成約率・活動量を可視化する

Marketing Hubのワークフローが「リード全体への自動配信」を設計するのに対し、Sales Hubのシーケンスは「担当者が個別に送る一連のメール+タスク」を自動化するものです。この違いを混同すると、設計がぶれます。HubSpotワークフローの設計方法についてはこちらの記事も参照してください。

HubSpot Marketing Hub vs Sales Hub 役割分担 Marketing Hub リード獲得 → 育成 → MQL判定 フォームCV・ランディングページ ワークフロー(全体自動化) リードスコアリング・MQL設定 メールマーケティング(一括配信) Sales Hub 商談化 → クロージング → 受注管理 ディール(商談)パイプライン シーケンス(個別メール自動化) タスク管理・通話ログ・録音 ミーティングスケジューラー MQL 引き継ぎ 共通CRM(コンタクトDB)を介してリードデータを共有
図1:HubSpot Marketing HubとSales Hubの役割分担。MQL判定を境にリードの主管がマーケから営業へ移行する。

Sales Hub導入直後にやるべき初期設定5ステップ

導入後に最初に整えるべき設定を優先順位順に解説します。ここを疎かにすると、後から全員の運用が崩れます。

ステップ1:パイプラインとディールステージの設計

HubSpotデフォルトのパイプラインには「アポイント」「提案中」「成約」などのステージが用意されていますが、自社の営業プロセスに合わせて必ずカスタマイズしてください。ステージ数は多すぎると運用が煩雑になるため、5〜7段階程度に絞るのが一般的です。

各ステージに「成約確率(%)」を設定すると、加重パイプライン金額の予測レポートが自動で算出されます。この数値は経営への予実説明にも使えるため、実態に近い値を最初から設定しておくことが重要です。

設定場所:「設定 → オブジェクト → ディール → パイプライン」

ステップ2:コンタクトとカンパニーのプロパティ整理

営業が日常的に更新するプロパティを絞り込み、必須入力・任意入力を明確に区分します。プロパティが多すぎると入力率が下がり、データ品質が劣化します。HubSpotのデータクレンジングは後から行うより、初期設計で予防するほうが効率的です。

BtoB向けに最低限用意しておくべきプロパティの例:

  • 業種・従業員規模・年商レンジ(ICP判定に使う)
  • リードソース(初回流入チャネル)
  • 担当営業・担当マーケ
  • 最終商談日・次回アクション予定日

ステップ3:チームメンバーの招待とロール設定

Sales Hubでは「スーパー管理者」「営業担当」「レポート閲覧のみ」などのロールを設定できます。営業担当者が誤って設定を変更するリスクを避けるため、権限の粒度を最初に決めておきます。

ステップ4:メール連携(Gmail / Outlook)の設定

営業担当者のGmailまたはOutlookをHubSpotに連携すると、送受信メールが自動的にコンタクトのタイムラインに記録されます。この連携がないと、コミュニケーション履歴がCRMに蓄積されず、チームでの引き継ぎや進捗確認が困難になります。

設定場所:「設定 → 統合 → メールの統合」

ステップ5:カレンダー連携とミーティングスケジューラーの設定

Google CalendarまたはOutlook Calendarを連携し、個人の「ミーティングリンク」を作成します。このURLを見込み客に送ると、空き時間を自動表示して日程調整が完結します。商談設定のリードタイムを短縮する効果が高く、インサイドセールスチームでは特に優先度の高い設定です。

シーケンス機能の使い方——個別フォローを仕組み化する

Sales Hubのシーケンスは、インサイドセールスの生産性を最も引き上げる機能のひとつです。設計の考え方と具体的な使い方を解説します。

シーケンスとは、特定のコンタクトに対して「何日後にメールAを送り、2日後にタスクB(電話)を設定し、さらに3日後にメールCを送る」といった一連のアクションを事前に設計し、自動実行する機能です。ただし、Marketing Hubのワークフローとは異なり、メール本文は担当者個人のメールアドレスから送信されます。そのため、より個人的なコミュニケーションに見える点が特徴です。

シーケンスが向いているユースケース

  • MQLに到達したリードへの初回アプローチ(初回メール→フォロー電話→再メール)
  • 商談後のお礼メール→資料送付→再確認の一連フォロー
  • 長期間未返信のリードへの再アプローチ
  • イベント・展示会後のフォローアップ(展示会リードのフォローアップはこちらも参照)

シーケンス設計のポイント

シーケンスは「返信があった時点で自動停止する」仕様です。そのため、相手が反応した後のフォローは担当者が手動で行う必要があります。この特性を踏まえると、シーケンスは「まだ返信していないリードへの継続的なタッチ」に特化させるのが合理的です。

ステップ数は3〜5本程度が現実的で、長くなるほど購読解除・スパム報告のリスクが上がります。各メールの差し込み変数(コンタクト名・会社名・担当者名)を活用し、テンプレートでも個人的に見える文面を心がけます。

設定場所:「セールス → シーケンス → 新しいシーケンスを作成」

マーケとインサイドセールスの連携設計については別記事で詳しく解説しています。

商談パイプラインの日常運用——営業がHubSpotを使い続けるための仕組み

設定が完了しても、営業チームが日常的に使わなければCRMは機能しません。定着させるための運用設計を解説します。

Sales Hubの定着に失敗する最大の原因は「入力の強制はするが、入力することのメリットが担当者に見えない」という設計ミスです。HubSpotを入力することで担当者自身の業務が楽になる仕組みを最初から組み込む必要があります。

毎日の運用フローの標準化

以下のような日次ルーティンをチームで合意しておくと、CRMデータの鮮度が維持されます。

  1. 朝:タスクの確認——HubSpotのタスク画面で本日対応すべきフォローアップを確認する
  2. 商談・電話後:即時ログ入力——通話ログ・メモをHubSpot上に記録し、次のアクションをタスクで設定する
  3. 週次:ディールの進捗更新——各ディールのステージ・金額・クローズ予定日を最新状態に保つ

通話ログ機能の活用

HubSpot Sales HubにはVoIP通話機能が内蔵されており、HubSpot画面上から直接電話をかけることができます(日本での利用可否はプランによって異なります)。通話が終わると、録音データと通話時間が自動的にコンタクトのタイムラインに保存されます。

外部ツールで通話している場合も、「コール」アクティビティとして手動ログを残せます。通話内容のメモを残す習慣をチームに根付かせることで、担当者交代時の引き継ぎコストが大幅に下がります。

ディール作成のトリガーをマーケと合意する

「いつディールを作成するか」のルールをマーケと営業で事前に合意しておくことが重要です。MQL到達時点で自動ディール作成するか、アポイント確定時に手動作成するかによって、パイプラインの意味が変わります。MQLとSQLの定義と設計については別記事を参照してください。

Sales Hubのレポート・ダッシュボード設計——営業マネージャーが見るべき指標

Sales Hubのレポート機能で何を可視化すべきかを整理します。経営報告に使えるダッシュボード構成も紹介します。

HubSpot Sales Hubには、標準レポートとカスタムレポートの両方が用意されています。まず標準レポートで全体像を把握し、不足している視点をカスタムレポートで補うアプローチが現実的です。

営業マネージャーが最低限見るべきレポート

  • パイプライン金額レポート:ステージ別の加重パイプライン合計を月次・四半期で追跡する
  • 成約率(Win Rate)レポート:ディール数ベースとディール金額ベースの両方を見る
  • 営業活動量レポート:担当者別の電話件数・メール件数・商談件数を集計し、行動量の偏りを把握する
  • ディールステージ滞留時間レポート:どのステージで商談が止まりやすいかを特定し、プロセス改善に活かす
  • ソース別成約率:どのチャネル・施策からのリードが最も成約しやすいかを分析し、マーケ予算配分の判断材料にする

HubSpotのレポート設計についての全体像はHubSpot レポート設計の記事で詳しく説明しています。マーケ側のアトリビューションレポートと組み合わせることで、リード獲得から受注までの全プロセスを数値で追えるようになります(HubSpotアトリビューションレポートも参照)。

Sales Hub ダッシュボード構成例(営業マネージャー向け) パイプライン状況 ● ステージ別ディール数・金額(棒グラフ) ● 加重パイプライン合計(今月 / 来月) ● クローズ予定日が過ぎたディール一覧 ● 担当者別パイプライン金額 営業活動量 ● 担当者別 電話 / メール / 商談件数 ● シーケンス開封率・返信率 ● タスク完了率(週次) ● ミーティング設定数 成約・失注分析 ● 成約率(件数ベース / 金額ベース) ● 失注理由ランキング ● ステージ別滞留日数(ボトルネック特定) チャネル別ROI(マーケ連携) ● リードソース別 成約数・成約率 ● 受注金額のアトリビューション ● CAC(顧客獲得単価)推移 4象限ダッシュボードで「パイプライン」「活動量」「成約分析」「マーケROI」を一画面で確認できる構成が理想
図2:Sales Hub ダッシュボードの構成例。4象限でパイプライン・活動量・成約分析・マーケROIを一元管理する。

Sales HubとMarketing Hubの連携設計——マーケから営業へのリード引き継ぎフロー

Sales HubはMarketing Hubと組み合わせることで真価を発揮します。リード引き継ぎの自動化と、連携における典型的な設計ミスを解説します。

マーケが獲得したMQLを営業に引き継ぐフローを自動化することは、BtoB企業のマーケ・セールス連携における最重要課題のひとつです。HubSpotでは以下のような自動化が可能です。

  • MQL到達 → 担当営業の自動アサイン:リードスコアが閾値を超えたコンタクトに、ルールベースで営業担当者を自動割り当てする
  • ディールの自動作成:MQL到達と同時にSalesパイプラインにディールを自動生成する
  • Slack通知との連携:HubSpotのワークフローからSlackへの通知を送り、担当者にリアルタイムでアラートを飛ばす

ただし、自動ディール作成を乱用すると「実態のない商談がパイプラインを埋める」問題が生じます。MQL到達=ディール作成とするか、アポイント確定=ディール作成とするかは、自社の営業プロセスと商談化率の実態を踏まえて決めてください。HubSpotでのMQL定義・設定についてはこちらの記事で詳述しています。

マーケとセールスの連携で機能不全に陥る典型例は「MQLの定義をマーケだけで決め、営業が合意していない」ケースです。マーケセールス連携の仕組み作りで解説しているとおり、SLAの合意なしに技術的な自動化だけ進めても、運用は定着しません。

Sales Hubのプラン比較——Free・Starter・Professional・Enterpriseの違い

Sales Hubは無料から使えますが、プランによって使える機能に大きな差があります。BtoB営業チームがどのプランを選ぶべきかを整理します。

HubSpot Sales Hubには4つのプランがあります(2025年時点の公式情報をもとに整理。最新の料金・機能はHubSpot公式サイトで確認してください)。

プラン 主な対象 主な制限・特徴
Free 個人・小規模チーム ディール管理・タスク・ミーティングスケジューラー利用可。シーケンス・レポートは限定的
Starter 5名未満の営業チーム シーケンス送信数・ユーザー数に上限あり。カスタムレポートは使えない
Professional 本格的なIS・営業チーム シーケンス・カスタムレポート・予測リードスコア・ルーティング自動化が使える
Enterprise 大規模チーム・複数事業部 カスタムオブジェクト・高度な権限管理・シングルサインオン対応

BtoB営業チームで本格的にシーケンスや営業レポートを使うなら、Professionalプランが事実上の最低ラインになります。無料プランやStarterで試験運用した後、Professional以上にアップグレードするケースが多いです。HubSpotの無料・有料プランの違いについての詳細はこちらも参照してください。

よくある失敗パターンと対策——Sales Hub定着に失敗する理由

Sales Hubの導入後に機能不全に陥る典型的なパターンと、その対策を実務視点で解説します。

失敗パターン1:プロパティを作りすぎて入力率が下がる

必須プロパティを増やしすぎると、営業担当者の入力負荷が上がり、CRMへの入力が後回しになります。結果としてデータが不完全なままになり、レポートも機能しなくなります。プロパティは「このデータがないと何が判断できないか」という基準で絞り込むのが原則です。

失敗パターン2:シーケンスをワークフロー的に設計する

シーケンスはあくまで「個別担当者からの個人的なメール」として機能します。マーケ的な一括配信ロジック(セグメントごとに大量送信)をシーケンスで実装しようとすると、メール品質の低下や配信負荷の集中が起きます。用途を明確に分けることが重要です。

失敗パターン3:パイプラインのステージ定義があいまいで営業間でバラつきが出る

「提案中」「商談中」「検討中」のような曖昧なステージ名では、担当者によってディールを置くステージが異なり、パイプライン全体の信頼性が下がります。各ステージに「このステージに移動させる条件(例:見積もり提出済み)」を明文化し、チームで合意することが必要です。

失敗パターン4:マネージャーがHubSpotを見ない

「CRMはメンバーが入力するもの」という認識のままでは定着しません。マネージャーがHubSpotのダッシュボードを週次ミーティングで開き、パイプラインデータを基に会話をする習慣がチームに根付くと、担当者の入力モチベーションが上がります。

HubSpot導入が失敗する7つの理由については別記事で詳しく解説しています。

まとめ

HubSpot Sales Hubは、パイプライン管理・シーケンス・通話ログ・レポートを一元化することで、BtoB営業チームの活動を可視化し、マーケとの連携精度を高めるプラットフォームです。設定の優先順位は「パイプライン設計 → プロパティ整理 → メール連携 → シーケンス設計 → レポート構築」の順で進めることが基本です。

定着のために最も重要なのは、技術的な設定よりも「誰がいつ何を入力し、マネージャーがどこを見るか」という運用ルールの合意です。HubSpotはツールであり、それ自体が成果を生むわけではありません。営業プロセスの設計とセットで導入することが前提です。

Sales Hubの設定や運用フローの設計でお悩みの場合は、外部の専門家に相談することも選択肢のひとつです。HubSpotの設定代行サービスHubSpot運用外注についての情報もあわせて参照してください。

よくある質問(FAQ)

HubSpot Sales HubのFreeプランでシーケンスは使えますか?
Freeプランではシーケンス機能は使えません。シーケンスを使うにはStarterプラン以上が必要です。ただしStarterには送信数の上限があるため、本格的なIS運用にはProfessionalプランが推奨されます。
Marketing HubなしでSales Hubだけ使えますか?
はい、Sales Hubは単独でも利用できます。ただし、マーケからのリード流入をHubSpot上で一元管理するにはMarketing Hubとの連携が必要です。Sales Hubのみの場合、コンタクトはCSVインポートや手動作成が主な入力経路になります。
シーケンスとワークフローはどう使い分ければよいですか?
シーケンスは「担当営業が特定の個人に送る個別メール+タスクの自動化」です。ワークフローは「条件に合致したコンタクト全体への自動処理(メール配信・プロパティ更新・通知など)」です。個別フォローはシーケンス、マーケ全体施策はワークフローで設計するのが基本です。
HubSpotの通話機能は日本で使えますか?
HubSpotのVoIP通話機能(HubSpot Calling)は日本でも利用可能ですが、発信できる国や番号取得の制限があります。利用可否と料金は最新のHubSpot公式情報を確認することを推奨します。利用できない場合でも、外部の電話ツールの通話ログをHubSpotに手動記録することは可能です。
Sales Hubの導入・設定を外部に依頼することはできますか?
はい、HubSpotの認定パートナーやフリーランスのHubSpot専門家に設定代行・運用支援を依頼することができます。初期設定・パイプライン設計・シーケンス構築・レポート設計など、一部または全体を外注することが可能です。

Sales Hubの設定・運用でお困りですか?

パイプライン設計・シーケンス構築・マーケとの連携設計など、HubSpot Sales Hubの導入・運用支援を行っています。初回のご相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

Tomohiro Toukaichi

BtoB SaaSのマーケティング責任者を経験後、フリーランスとして独立。マーケティング戦略設計、KPI・予算設計、広告運用、HubSpot設計・ファネル構築・リードナーチャリングなど、戦略から実行まで一気通貫で支援。

MQL +150% SQL転換率 +30% HubSpot設計・保守運用
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