マーケティング担当がいない会社が今すぐ取り組むべき8つのこと

「マーケティング担当者を採用できていない」「営業とCSはいるが、マーケは空席のまま」——BtoB企業、とりわけ従業員50名以下のスタートアップや中小企業では、こうした状況は決して珍しくありません。しかし現実には、営業が疲弊し、インバウンドリードはほぼゼロ、認知は口コミと既存顧客紹介に依存している、という状態が続きます。この問題を「人がいないから仕方ない」と先送りにすることは、競合との差を広げるだけです。本記事では、専任のマーケティング担当者がいない会社が、限られたリソースの中で何を優先し、どう動き始めるべきかを、実務の視点から順を追って解説します。採用・外注・内製化それぞれのシナリオも含め、意思決定に直結する情報を提供します。

目次

まず理解すべき「マーケ担当不在」が引き起こす構造的リスク

担当者がいないことの問題は「施策が回らない」だけではありません。放置することで生まれる構造的なリスクを把握しておくことが、優先順位づけの土台になります。

マーケティング担当者がいない会社では、以下の三つのリスクが同時に進行します。

  • リード獲得の属人化:営業個人の人脈や紹介に依存したリード構造は、担当者の退職や景気変動で一気に機能しなくなります。
  • 競合との情報格差の拡大:競合が検索流入・コンテンツマーケティング・広告で認知を広げている間、自社は市場から「見えない存在」になっていきます。
  • 営業コストの高止まり:マーケが機能しない分、営業がリード獲得から教育まで担うことになり、一件あたりの受注コストが上昇します。

特にBtoBでは、購買検討が始まるタイミングで「知っている会社」に問い合わせが集中する傾向があります。認知形成はリードタイムが長く、今動かないと半年〜1年後のパイプラインに直接影響します。「担当者がいないから後回し」ではなく、「担当者がいないからこそ、今できることを確実にやる」という発想の転換が必要です。

マーケ担当不在が招く負のスパイラル リード獲得が 紹介・属人化に依存 営業がリード獲得も 兼任・疲弊 受注単価・コストが 高止まり 競合との認知・リード格差が拡大 → 半年〜1年後のパイプラインに直撃 ※ 各要素は独立して発生するが、放置すると相互に悪化する
図1:マーケ担当不在が引き起こす3つのリスクと、それが連鎖して生まれる競合格差

最初の30日でやるべき「現状の可視化」4ステップ

施策を走らせる前に、自社の現状を数字で把握することが不可欠です。ここを飛ばすと、打ち手がズレたまま時間とお金を消費します。

マーケ担当がいない状態で最も起きやすい失敗は、「とりあえずSNSを始める」「とりあえずブログを書く」という施策先行のアクションです。まず現状を可視化し、自社の課題がどこにあるかを特定することが優先です。

ステップ1:リードの流入経路を洗い出す

過去12ヶ月の受注・商談データを確認し、リードがどこから来ているかを分類します。「紹介」「展示会」「検索」「広告」「SNS」など、経路別に件数と受注率を記録します。CRMがない場合は、営業担当者へのヒアリングと請求書・契約書の遡り確認で代替できます。

ステップ2:自社サイトの流入データを確認する

Google Search ConsoleとGoogle Analytics(GA4)の無料版で、月間セッション数・主要流入キーワード・コンバージョン数を確認します。どちらも未導入であれば、この段階で設置することが最初の施策になります。設置コストはほぼゼロで、情報収集の精度が大きく変わります。

ステップ3:競合3社のコンテンツ・SEO状況を調べる

競合のWebサイトを確認し、「どんなコンテンツを出しているか」「検索でどんなキーワードで上位表示されているか」を把握します。Ahrefs・SEMrushなどの有料ツールがなくても、Google検索で主要キーワードを調べ、競合がどのコンテンツで上位に入っているかを手動で確認できます。

ステップ4:顧客インタビューを2〜3件実施する

既存顧客に「なぜ自社を選んだか」「検討時に何を調べたか」「どの情報が意思決定に影響したか」を聞きます。このインタビューは、コンテンツテーマ選定・訴求軸の設定・FAQ作成の素材になります。マーケ担当がいなくても、経営者や営業担当が30分のインタビューを実施することは可能です。

担当者不在でも実行できる施策:優先順位の付け方

施策は無数にありますが、リソースが限られているからこそ「効果とコストのバランス」で優先順位を付けることが重要です。

マーケティング施策は大きく「即効性があるが費用がかかるもの」と「時間はかかるが資産として残るもの」に分類できます。担当者がいない会社は後者を軸に据えながら、短期のリード補完として前者を組み合わせるのが現実的です。

最優先:Webサイトのコンバージョン改善

既存の流入を取りこぼしている状態を放置したまま、新たな流入施策に投資するのは非効率です。まずお問い合わせフォームへの導線・CTAの文言・サービス説明ページの情報量を見直します。特に「料金の目安」「導入事例」「よくある質問」は、検討段階の訪問者が求める情報であり、これらが揃っていないとCVRが低くなります。

第2優先:SEOコンテンツの制作

顧客が「検討段階で調べるキーワード」に対応した記事を月1〜2本制作します。例えば「〇〇 導入 費用」「〇〇 比較」「〇〇 とは」といった検討キーワードは、購買意欲が明確なユーザーが検索するため、問い合わせにつながりやすい傾向があります。制作は外部ライターやフリーランスに委託することも可能ですが、内容の正確性チェックは社内で行う体制が必要です。

第3優先:メールマーケティングの整備

既存の名刺・過去の商談リスト・展示会で獲得した連絡先に対して、月1回程度のメール配信を行います。BtoBでは購買検討が長期にわたるため、定期的な接触でタイミングが来たときに想起してもらう仕組みが重要です。MailchimpやHubSpotの無料プランは、小規模な配信には十分機能します。

後回しにしてよいもの

SNSの更新頻度を上げること、TikTokやInstagramへの参入、展示会への多数出展は、専任担当者がいない段階では費用対効果が低くなりがちです。「やらない理由」ではなく「リソースが整ってから本格化する」という優先順位の問題として判断します。

施策優先順位マトリクス(リソース × 効果) ← リソース小        リソース大 → 効果大 効果小 ★ 最優先エリア ・CVページ改善 ・SEOコンテンツ ・メール配信整備 ▲ 体制整備後に着手 ・リスティング広告 ・展示会出展 ・ABM施策 △ 補助的に検討 ・SNS運用 ・ウェビナー ・プレスリリース ✕ 現段階では後回し ・動画制作 ・ポッドキャスト ・大規模イベント ※ 優先順位は自社の現状・業種・顧客の情報収集行動によって変わります
図2:マーケ担当不在の会社が取り組む施策の優先順位マトリクス。リソース投下量と期待効果で4象限に分類。

外部リソースの活用:フリーランス・代理店・ツールの選び方

全てを内製化しようとすると動けなくなります。外部に任せるべき領域と、社内で判断すべき領域を分けることが重要です。

マーケ担当不在の会社が外部リソースを活用する際、最もよくある失敗は「丸投げ」です。代理店やフリーランスに任せたが、何をやっているかわからない、成果が見えない、という状況は、社内に判断できる人間がいないことで生じます。外部活用を機能させるには、「何をKPIとするか」「どのレポートを何の頻度で受け取るか」を依頼前に決めることが必要です。

フリーランスマーケターの活用が向いているケース

月10〜30万円程度の予算で、特定領域(SEO、広告運用、MA設定など)の専門家を週1〜2日稼働で確保したい場合はフリーランスが適しています。採用と異なり、合わなければ契約変更ができる柔軟性があります。ただし、戦略設計や意思決定まで委ねることは難しいため、「誰が最終判断を下すか」を社内で決めておく必要があります。

マーケ支援会社・代理店が向いているケース

複数の施策を一括で進めたい場合や、広告・コンテンツ・分析を統合して動かしたい場合は、専門会社への委託が有効です。月50万円以上の予算を確保できる場合、複数のフリーランスを個別にマネジメントするよりも効率的なケースがあります。選定時は「BtoB支援の実績があるか」「KPIベースの契約が可能か」を確認します。

ツールによる自動化・効率化

担当者がいない分をツールで補う発想は有効ですが、ツール導入それ自体は施策ではありません。以下は、少人数でも運用できる現実的なツール選定の目安です。

  • MA(マーケティングオートメーション):HubSpotの無料プランは、CRM・メール配信・フォーム・LP作成まで一通りカバーします。Marketoやpardotは中〜大規模向けで、専任担当者がいない段階では過剰投資になりやすいです。
  • SEO分析:Google Search Consoleは無料で必須。競合調査にはAhrefsやSEMrushが有用ですが、月額費用(2〜3万円程度)が発生します。まず無料ツールで基礎データを揃えることを優先します。
  • アクセス解析:GA4の設定と基本的なレポート確認は必須です。Looker Studioと組み合わせることで、経営層への報告レポートを低コストで作成できます。

「とりあえず採用」では解決しない:マーケ採用前に整えるべきこと

マーケ担当者の採用は解決策の一つですが、採用の前に整えるべき条件があります。ここを飛ばすと、採用しても定着しない・機能しないという問題が起きます。

マーケ担当者を採用することで問題が解決すると考える経営者は多いですが、採用がうまく機能しないケースには共通したパターンがあります。採用する前に以下の問いに答えられるかを確認してください。

採用前に確認すべき3つの問い

  • 何をKGI・KPIとして求めるか:「売上を上げてほしい」は指示ではありません。「月間リード数を現状の10件から30件に増やす」「Webからの問い合わせを月5件以上にする」という具体的な数値目標を設定できているかが重要です。
  • マーケが機能する前提条件が整っているか:サービスのターゲット顧客が明確か、競合との差別化ポイントが言語化されているか、過去の受注パターンが分析されているかは、マーケ担当者が入社後に迷わず動けるかに直結します。
  • 予算と権限を与えられるか:施策には費用がかかります。「何もかも稟議が必要」「予算ゼロで成果を出してほしい」という環境では、マーケ担当者は動けません。最初から月30〜50万円の施策予算を確保できる見通しがあるかを確認します。

採用よりも先に着手できること

採用の準備をしながらでも、前述のWebサイト改善・Google Search Consoleの設置・顧客インタビューは今日から着手できます。これらを進めることで、採用後の担当者が「ゼロから調査する」時間を短縮でき、即戦力として動きやすい環境を作ることができます。また、採用候補者に「ここまで整理されている会社」として見られることは、優秀なマーケターを惹き付ける材料にもなります。

よくある失敗パターンと、その回避方法

マーケ担当不在の会社が陥りやすい失敗には、再現性があります。事前に把握しておくことで、同じ轍を踏むリスクを下げられます。

失敗1:施策が多すぎて全て中途半端になる

「ブログも書く、SNSもやる、広告も試す、展示会にも出る」と同時並行で走らせた結果、全て中途半端に終わるケースです。担当者がいない状況では、施策を絞ることが唯一の合理的判断です。四半期ごとに「今期はこの施策に集中する」と決め、それ以外は意図的に止める判断が必要です。

失敗2:成果測定の基準を決めないまま走らせる

「3ヶ月やったが成果が出なかった」という判断の多くは、そもそも何を成果とするかを定義していないことが原因です。SEOであれば「流入数○件以上」「特定キーワードでの上位表示」、メール配信であれば「開封率○%以上」「返信・問い合わせ件数」といった、施策ごとの評価指標を事前に決めておきます。

失敗3:営業とマーケの役割分担が曖昧なまま進める

マーケが生成したリードを営業が「質が低い」と判断してフォローしない、あるいは営業が「自分で取ってきた案件」とマーケリードを区別する、といった摩擦が起きます。MQLの定義(マーケが営業に渡す基準)とSLAの設定(営業が何日以内に対応するか)を、担当者不在の段階から経営者・営業リーダーが合意しておくことが重要です。

失敗4:外部委託先のマネジメントを怠る

代理店やフリーランスに任せた後、「お任せ」にしてしまうと、方向性がズレたまま費用だけ発生します。月1回の定例MTGと、KPIに基づくレポート確認を必ず行います。この管理コストを見越した予算・工数の確保が、外部活用を機能させる条件です。

自社マーケを機能させるための体制設計:段階別ロードマップ

体制は一度に作るのではなく、フェーズごとに整えることが現実的です。現在地を確認した上で、次のフェーズへの移行条件を設定します。

マーケ担当不在の会社が目指すべき体制は、会社の規模・フェーズ・予算によって異なります。ここでは「現状整理フェーズ」「施策実行フェーズ」「内製化フェーズ」の三段階で整理します。

フェーズ1:現状整理(0〜3ヶ月)

Google Search ConsoleとGA4の設置、流入経路の把握、顧客インタビューの実施、競合調査を行います。費用はほぼゼロ、必要なのは経営者または営業リーダーの時間(週2〜3時間程度)です。このフェーズのゴールは「自社の課題とリード構造が数字で見えている状態」です。

フェーズ2:施策実行(3〜12ヶ月)

優先施策を絞り、外部リソースを活用しながら実行します。フリーランスマーケターや制作会社との契約を始め、月1〜2本のコンテンツ制作、CVRの改善、メール配信の整備を進めます。このフェーズのゴールは「Webから月○件の問い合わせが安定的に来る状態」を作ることです。

フェーズ3:内製化(1年以降)

施策の効果検証と再現性が確認できた段階で、専任のマーケ担当者を採用します。このとき、既にデータと施策の型が存在しているため、採用した人材がゼロから設計する必要がなく、立ち上がりが早くなります。採用後は外部委託の範囲を絞り、内製比率を上げていく判断が可能になります。

まとめ

マーケ担当者がいない会社が取り組むべきことを整理すると、以下の順序になります。

  • まず現状を可視化する(流入経路・Webデータ・競合・顧客の声)
  • 施策を絞り、CVページ改善→SEOコンテンツ→メール配信の順で着手する
  • 外部リソースはKPIと管理体制を整えた上で活用する
  • 採用は「環境が整ってから」という判断を早めに意識する
  • 体制はフェーズ別に段階的に整える

「担当者がいないからマーケはできない」ではなく、「担当者がいないからこそ、正しい順番で動く」ことが、限られたリソースで最大の成果を出す唯一の方法です。もし現在の状況に課題を感じており、マーケ戦略の設計や実行支援について相談したい場合は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

よくある質問(FAQ)

マーケ担当者がいない会社は、まず何から始めればよいですか?
最初に取り組むべきは「現状の可視化」です。Google Search ConsoleとGA4を設置し、月間流入数・問い合わせ数・リードの流入経路を数字で把握します。施策を走らせるのは、この現状把握が完了してからです。
マーケ施策を外部に委託する際、何に注意すればよいですか?
委託前に「KPIの設定」「レポートの頻度と形式」「誰が社内で最終判断を下すか」を決めることが重要です。丸投げにすると、方向性のズレが発覚するのが数ヶ月後になり、費用と時間のロスが大きくなります。
予算が月10万円以下でも、有効なマーケ施策はありますか?
あります。Google Search ConsoleとGA4は無料で利用でき、顧客インタビューと既存のWebサイト改善はほぼコストゼロで実施できます。SEOコンテンツ制作も、外部ライターへの委託であれば月5〜10万円の範囲で開始できます。まず「今ある流入を取りこぼさない仕組み」を優先します。
マーケ担当者を採用するタイミングはいつが適切ですか?
施策の型と成果指標が整い、「何をやれば成果が出るかの仮説がある状態」で採用するのが理想です。ゼロの状態で採用すると、担当者がリサーチと設計から行う必要があり、成果が出るまでの時間が長くなります。フェーズ2の施策実行期に一定の成果が確認できた段階が、採用検討の一つの目安です。
営業担当者がマーケも兼務することは現実的ですか?
短期的な補完としては機能しますが、持続性には限界があります。営業とマーケは求められるスキルセットと時間軸が異なるため、兼務が続くと両方が中途半端になるリスクがあります。兼務する場合は「週に何時間マーケに使うか」を明示し、施策の範囲を明確に絞ることが必要です。
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