HubSpot運用で社内リソースが足りないときの対処法と外注活用ガイド

「HubSpotを導入したはいいが、誰も本格的に使いこなせていない」——そうした声は、BtoBマーケティングの現場で珍しくありません。ツール自体は高機能であっても、ワークフロー設計・リードスコアリング・レポート分析といった運用業務は、専門知識と継続的な工数の両方を要求します。とくにマーケ担当者が一人あるいは兼任という組織では、日常業務をこなしながらHubSpotを深掘りする余裕は生まれにくいのが実態です。本記事では、リソース不足に陥る構造的な原因を整理したうえで、社内で対処できる範囲と外部リソースに委ねるべき範囲の見極め方、さらに委託先の選び方と依頼時の注意点まで、実務視点で解説します。HubSpotを「入れて終わり」にしないための打ち手を、順を追って確認していきましょう。

なぜHubSpot運用でリソース不足が起きるのか

このセクションでは、HubSpot運用においてリソース不足が構造的に生じやすい理由を整理します。原因を正確に把握することが、対策の第一歩です。

HubSpotは「オールインワン」と称されるだけあり、CRM・MA・CMS・カスタマーサポートといった機能を横断的に備えています。裏を返すと、それぞれの機能を有効活用するためには、マーケティング・セールス・IT・コンテンツといった複数領域の知識が必要です。一人あるいは少人数のチームがこれらを担おうとすると、どこかで必ず限界が来ます。

リソース不足が顕在化しやすい場面は、主に以下の三つです。

  • 初期設定・カスタマイズ段階:プロパティ設計、パイプライン構成、フォームとランディングページの連携など、立ち上げ時の設定作業は工数が集中しやすい。
  • ワークフロー運用段階:リードナーチャリングのシナリオ設計・メール配信・スコアリングルールの調整は、定期的な見直しが前提となる継続業務です。
  • 分析・改善段階:レポートダッシュボードの構築やアトリビューション分析は、データリテラシーと時間の両方を要します。

さらに、HubSpotは機能アップデートが頻繁なため、キャッチアップコストも無視できません。担当者が退職・異動した際に運用知識が属人化していると、引き継ぎだけで数ヶ月を要するケースもあります。こうした構造的な要因が重なることで、「ツールはあるのに使いきれない」状態が生まれます。

リソース不足が引き起こす具体的なビジネスリスク

このセクションでは、運用リソースが不足したまま放置した場合に生じるビジネス上のリスクを整理します。危機感を正確に把握することで、対策の優先度を判断できます。

リソース不足を「なんとなく忙しい」問題として扱っている間は、実害が見えにくいことがあります。しかし実態としては、以下のようなビジネスリスクに直結します。

  • リードの放置:ワークフローが機能しないと、せっかくフォームから流入したリードへのフォローが遅延し、商談化率が低下します。
  • データ品質の劣化:重複コンタクト・古いプロパティ値・未定義のライフサイクルステージが蓄積すると、CRMとしての信頼性が失われ、営業側も活用しなくなります。
  • ライセンスコストの無駄:HubSpotのProfessional・Enterpriseプランは年間で数十万〜数百万円規模の費用です。活用度が低ければ、投資対効果(ROI)は当然悪化します。
  • マーケ・セールス間の不信:MQL定義が曖昧なまま運用が続くと、営業から「マーケから来るリードは質が低い」という評価が固定化され、連携が崩れます。

これらのリスクは、時間が経つほど修正コストが上がります。「今は人手が足りないから」という先送りは、複利的に問題を悪化させる判断といえます。

HubSpot運用リソース不足が引き起こすリスク連鎖 ワークフロー停止 リードへのフォロー遅延 データ品質劣化 CRM信頼性の喪失 商談化率の低下 マーケROIの悪化 ライセンス費用の無駄 投資対効果の悪化 マーケ・セールス不信 組織連携の崩壊 ※放置期間が長いほど修正コストは増大する
図1:HubSpot運用リソース不足が引き起こすリスクの連鎖構造。ワークフロー停止・データ劣化が商談化率低下を招き、さらに組織全体の課題へと波及する。

まず社内でできること:リソース不足を部分的に解消する施策

このセクションでは、外部リソースに頼る前に社内で取り組める対策を整理します。完全な解決には至らないケースが多いですが、緊急度を下げる効果があります。

外注やフリーランス活用を検討する前に、社内でコントロールできる部分を整理しておくことが重要です。優先度の高い施策を以下に挙げます。

運用スコープを絞る

HubSpotの全機能を同時に使おうとすることが、リソース分散の最大の原因です。まず「今の自社に必要な機能」を三つ程度に絞り込み、それ以外はいったん無効化する判断が有効です。例えば、メール配信とリード管理だけに集中し、ワークフローの自動化は段階的に拡張するアプローチが現実的です。

ナレッジを文書化し属人化を防ぐ

現在の運用担当者の頭の中にしかない設定内容・判断基準・更新ルールを、Notionやスプレッドシートに書き出すだけでも、将来の引き継ぎコストを大幅に圧縮できます。「なぜこの設定にしたのか」という意図まで記録しておくことが重要です。

HubSpot Academy を活用する

HubSpotは公式の学習プラットフォーム「HubSpot Academy」を無償で提供しており、マーケティング・セールス・CRMの各機能に関する認定資格講座が日本語でも受講できます。担当者が体系的な知識を身につけることで、場当たり的な操作から脱却できます。

社内の兼任者を特定し役割を明確化する

完全な専任担当者を置けない場合でも、「HubSpotの設定変更はAさん」「レポート確認はBさん」のように役割を分担することで、全員が中途半端に関わる状態よりも責任が明確になります。

ただし、これらの施策はあくまでも「現状の悪化を防ぐ」レベルの対策です。本格的にHubSpotを活用して成果を出すためには、一定の専門工数が必要であり、社内リソースだけで完結させようとすることには限界があります。

外部リソース活用の判断基準:どこから外注すべきか

このセクションでは、社内対応と外注の線引きをどこで行うべきかの判断基準を整理します。全部外注しても全部内製しても、うまくいかないケースが存在します。

外部リソースの活用を検討する際、よくある失敗が「全部任せれば解決する」という期待です。実際には、丸投げをすると自社のビジネス文脈が反映されない運用になりやすく、後から修正が難しくなります。一方で「全部内製でやりきる」も、専門性と工数の両面でボトルネックを生みます。

判断の基本軸は「戦略と文脈の理解が必要な業務か、実装・運用作業か」という区分です。

  • 社内で持つべき業務:ICP(理想顧客プロファイル)の定義、MQL・SQLの判断基準の設計、マーケ・セールス間のSLA合意、KGI・KPIの設定。これらは自社のビジネス理解なしには設計できません。
  • 外部に委ねやすい業務:HubSpotの設定変更・ワークフロー実装・レポートダッシュボード構築・コンテンツのHTMLコーディング・メール配信の実務。ルールさえ明確であれば、外部でも実行できます。

「戦略は内製、実装は外注」という分業が、現実的かつ効果的なモデルです。ただし、この分業を機能させるには、社内側が要件を明確に言語化できることが前提となります。「なんとなく改善したい」という状態では、外注先も動けません。

外部リソースの選択肢:代行会社・フリーランス・副業人材の比較

このセクションでは、外部リソースの主要な選択肢を比較します。それぞれの特性を理解したうえで、自社の状況に合った選択を行うことが重要です。

HubSpot運用の外部サポートとして現実的な選択肢は、主に三つあります。代行会社(エージェンシー)、フリーランスマーケター、副業人材です。それぞれの特徴を整理します。

選択肢 向いているケース 費用感(目安) 注意点
代行会社(エージェンシー) 複数機能をまとめて委託したい・窓口を一本化したい 月額20万〜100万円以上 担当者の入れ替わりが起きやすい。自社への理解に時間がかかる場合がある
フリーランスマーケター 特定領域(HubSpot設定、コンテンツ制作など)に絞って依頼したい 月額10万〜50万円程度 複数領域をカバーできる人材は限られる。稼働量の上限がある
副業・複業人材 コストを抑えつつ、実務経験者の知見を得たい 月額5万〜20万円程度 稼働時間が限られる。緊急対応が難しいケースが多い

費用感はあくまでも目安であり、依頼する業務範囲・スキルレベル・契約形態によって大きく変動します。また、いずれの選択肢でも「初回の業務定義と期待値のすり合わせ」に失敗すると、成果が出ないまま費用だけがかかる状況になりやすい点は共通しています。

フリーランス活用で成果を出すための要件定義の作り方

フリーランスや副業人材に依頼する際に最もよくある失敗は、「依頼内容が曖昧なまま契約してしまう」ことです。発注前に以下を言語化しておくことを強く推奨します。

  • 依頼したい業務の具体的なアウトプット(例:週次レポートの作成、ワークフローの新規構築)
  • 月間稼働時間の目安と連絡方法(Slack常駐か、週次MTCのみか)
  • 現在のHubSpotの利用プランと設定の現状
  • 成功の定義(KPI):何が達成されれば継続・拡大するか

これらを「業務委託の要件定義書」として一枚にまとめておくだけで、候補者とのミスマッチを大幅に減らせます。

「丸投げ」が失敗する理由:外注活用の落とし穴

このセクションでは、外部リソース活用でよくある失敗パターンを整理します。外注すること自体が目的化すると、コストに見合う成果が出にくくなります。

HubSpot運用の外注で最もよく見られる失敗は、以下の三つのパターンに集約されます。

パターン1:「設定はしてもらったが使い方がわからない」

代行会社やフリーランスにHubSpotの設定を依頼した結果、複雑なワークフローやカスタムプロパティが構築されたものの、社内に運用できる人材がいないという状態です。外注終了後に何も動かせなくなるリスクがあります。対策として、委託期間中に社内担当者がキャッチアップできるよう、説明・レクチャーの時間を契約に含めることが重要です。

パターン2:「レポートは毎月来るが改善につながらない」

定型レポートの納品だけが行われ、「だから何をすべきか」という示唆がない状態です。レポートは手段であり目的ではありません。依頼時に「レポートから次のアクションを提案すること」を成果物の要件に含める必要があります。

パターン3:「担当者が変わるたびにゼロから説明している」

代行会社では担当者の異動・退職が発生するため、自社の文脈の引き継ぎが不十分になりやすいです。対策として、ミーティング議事録や設定ドキュメントを常に自社側で保持しておくことが重要です。外注先のサーバーや管理ツール内にのみ情報がある状態は避けるべきです。

外注活用の失敗パターンと対策 失敗①:「設定してもらったが使えない」 → 対策:委託期間中に社内キャッチアップ・レクチャーを契約に含める 失敗②:「レポートは来るが改善しない」 → 対策:「次のアクション提案」を成果物の要件として契約書に明記する 失敗③:「担当者交代のたびにゼロから説明」 → 対策:設定ドキュメント・議事録は常に自社側で保持・管理する ※いずれも「要件定義と情報管理の主体を自社に置く」ことで防止できる
図2:HubSpot運用の外注活用で頻発する三つの失敗パターンと、それぞれの対策。共通点は「自社が主体性を持って関与すること」にある。

社内体制の段階的な整え方:フェーズ別ロードマップ

このセクションでは、リソース不足の状態から段階的にHubSpot運用体制を整えていくフェーズ別の考え方を示します。一足飛びに理想形を目指すのではなく、段階的な移行が現実的です。

リソース不足の状態から安定した運用体制へ移行するには、段階的なアプローチが現実的です。以下の三フェーズを参考に、自社の現在地を確認してください。

フェーズ1:最小限の運用を安定させる(目安:0〜3ヶ月)

まず「今動いているものを壊さない」ことを優先します。使っている機能の棚卸し、設定の文書化、担当者の明確化を行います。この段階では新機能の追加より、現状の安定化を最優先にします。外部リソースを活用する場合は、現状調査とドキュメント整備をサポートしてもらうスコープが適切です。

フェーズ2:コア機能を深化させる(目安:3〜9ヶ月)

安定した土台ができたら、リード管理・ワークフロー・レポートのいずれか一つに集中して改善を進めます。この段階では、KPIを設定して改善の効果を測定できる状態を作ることが重要です。フリーランスや副業人材との協業が最も効果を発揮しやすいフェーズです。

フェーズ3:運用を内製化・スケールさせる(目安:9ヶ月以降)

外部リソースのサポートを受けながら蓄積したノウハウをもとに、社内での運用能力を高めていきます。専任担当者の採用検討や、マーケ・セールスを巻き込んだ全社的な活用展開がこのフェーズの目標です。

このロードマップはあくまでも一般的な目安であり、組織規模・HubSpotの利用プラン・現在の活用度によって大きく異なります。自社の状況を正確に把握したうえで、フェーズの設定をカスタマイズすることが重要です。

まとめ

HubSpotの運用リソース不足は、「ツールを導入した組織」が共通して直面する構造的な課題です。本記事で整理した内容をふりかえります。

  • リソース不足の原因は、HubSpotの機能範囲の広さと、運用に必要な複数領域の専門性の組み合わせにある
  • 放置するとリード放置・データ劣化・ROI悪化・組織間不信というリスクが連鎖する
  • 社内での対応は「スコープを絞る」「属人化を防ぐ」が中心。ただし限界がある
  • 外注活用の分業軸は「戦略・文脈の判断は社内、実装・実務は外部」が基本
  • 代行会社・フリーランス・副業人材それぞれに適したユースケースがある
  • 外注失敗の共通原因は「要件の曖昧さ」と「情報管理の委任」。自社が主体性を持つことが前提
  • フェーズ別のロードマップで段階的に体制を整えることが現実的

HubSpotを真に活用できる状態にするためには、ツールの問題ではなく「誰が・何を・どう運用するか」という体制設計の問題として向き合うことが求められます。社内リソースの限界を正直に認識したうえで、適切な外部リソースと組み合わせる判断が、多くの組織にとって現実的な解になるはずです。

よくある質問(FAQ)

HubSpotの運用だけをフリーランスに任せることはできますか?
可能です。ただし、MQLの定義やKPI設計といった戦略的な判断は自社側で行うことが前提です。「HubSpotの設定変更・ワークフロー実装・レポート作成」のような実務作業であれば、フリーランスに委ねやすい範囲です。依頼前に業務範囲と成果物を明確に定義しておくことが、ミスマッチを防ぐうえで重要です。
社内に専任のHubSpot担当者がいない場合、何から始めればよいですか?
まず現在使っている機能の棚卸しと設定の文書化から始めることを推奨します。「何が動いていて、何が動いていないか」を可視化するだけで、優先すべき課題が明確になります。その後、外部リソース活用の要否を判断する材料が揃います。
HubSpotの代行会社とフリーランスはどちらを選ぶべきですか?
一概にどちらが優れているとは言えません。複数機能をまとめて委託したい・窓口を一本化したい場合は代行会社が向いています。特定の専門領域(例:ワークフロー設計、コンテンツSEO)に絞って依頼したい場合はフリーランスが費用対効果の面で優れることが多いです。両者を組み合わせるケースもあります。
HubSpotの運用コストはどの程度を想定すれば良いですか?
ライセンス費用とは別に、運用工数のコストを考える必要があります。フリーランスや副業人材に依頼する場合、月額5万〜50万円程度が現実的な目安です(業務範囲・スキルレベルによって大きく異なります)。代行会社への委託では月額20万円以上になるケースが多く見られます。いずれも初期の要件定義・すり合わせ工数を別途見込んでおくことが重要です。
HubSpotの運用を外注する際に、情報漏洩リスクはありますか?
リードデータや顧客情報を含むCRMを外部の人材が操作することになるため、情報管理の観点からの対策は必要です。具体的には、HubSpot上で外部担当者に付与する権限を必要最小限に絞ること、業務委託契約に秘密保持条項(NDA)を含めること、が基本的な対策です。操作ログも定期的に確認することを推奨します。
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